都市部で見つけた「移住の動機」と初期調査の壁
最初の3か月は、移住動機を整理するだけでも時間がかかりました。夫は自然環境と子育て環境を、妻は仕事の継続性とコミュニティへのアクセスを重視。自治体の移住ポータルは情報が豊富な一方、家庭が求める「生活導線」の視点が抜け落ちており、イベントに参加して初めて人の顔が見える状態でした。
初期調査で活用したツール
- オンライン移住フェアのアーカイブ動画 → 行政担当者の温度感を把握
 - 関係人口アプリでの短期滞在マッチング → 地域プロジェクトに参加
 - 仕事領域×地域キーワードでのSNS検索 → 生活者視点のリアルな投稿を収集
 
企業が支援する場合、候補地の生活導線(医療・教育・交通・通信)を可視化することが初期離脱の防止につながります。
お試し住宅と二拠点生活フェーズの課題
次の4か月は、お試し住宅と短期賃貸を活用して二拠点生活を実施しました。課題だったのは、遠隔勤務中の通信品質と、子どもの学習支援。自治体が提供するコワーキングスペースは快適でしたが、週3日利用を続けると小さなコストが積み重なります。そこで、地域企業からのサポートを受けてオフィスをシェアし、法人契約の余剰席を活用するモデルを共創しました。
児童クラブの空き状況はシーズンごとに変動。脚光を浴びる「お試し住宅」は出口設計が弱いため、自治体・教育委員会・企業の三者での受入スキームが求められます。
地域コミュニティとの関係構築と仕事創出
移住後半は、地域プロジェクトにジョインして仕事の幅を広げました。関係人口制度で出会った地域プロデューサーが、クラフトビール事業のマーケティング支援を依頼。仕事の合間に地域の課題をヒアリングし、SNS発信とデータ分析を掛け合わせて販路開拓を支援しました。
移住の成功要因は「頼れる人がいる状態」をいかに早く作れるか。一次情報に触れながら自分の役割を見つけられる設計が鍵です。
企業が移住支援を行う場合、関係人口アプリのリードと、人事制度のリモートワーク許可の連携を整備すると定着率が向上します。
自治体支援策の改善提案とKPI設計
体験を通して見えたのは、支援策が「制度の紹介」で止まっているケースが多いことです。移住者の行動ログを共有し、自治体と企業がKPIを共通化する仕組みが必要だと感じました。
- 移住検討フェーズ → 気候・医療・通信の疑問点に即応できるチャットサポート
 - お試し住宅フェーズ → 生活導線とコミュニティをセットで体験できるガイドツアー
 - 定住フェーズ → 住民票異動後の「伴走ミーティング」で生活課題を吸い上げる
 
KPIは「移住相談→短期滞在→二拠点→定住」のフェーズごとに設定。オンライン・オフライン双方のタッチポイントを可視化するダッシュボードがあれば、企業の投資判断も加速します。